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●「旧耐震」と「新耐震」

 昭和25年に建築基準法ができて以降、多くの地震が発生しています。地震のたびに建築基準法が見直されているのですが、大きく分けると、昭和56年6月以前に建築確認申請を行った「旧耐震基準」と、それ以降に建築確認申請を行った「新耐震基準」の建物が存在します。旧耐震基準は、現行の基準と比べると耐震性に劣る可能性が高くなっています。

 木造住宅の場合、もう一つ大きな転換点があります。それは、平成12年6月です。平成7年1月17日に発生した、阪神淡路大震災の教訓を法律に反映させたのがこのタイミングで、平成12年6月以降に建築確認申請を行った現行基準と、新耐震ですが現行基準を満たしていない可能性が高い昭和56年6月以降で平成12年6月までに建築確認申請を行った建物が存在します。

住宅の耐震性について

■壁の配置バランスの規定

■接合部の規定

■旧耐震基準物件の診断結果分布

■新耐震基準物件の診断結果分布

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 調べ

●昭和56年6月以前と以降で何が違うのか?

 コンクリート造も、木造も、多くの建築物の耐震性能は「壁の量」で決まります。壁の量が多ければ耐震性が高く、少なくれば低いということになります。たまに、「柱が太いから地震に強い」と勘違いしてる方がいますが、一部の建物を覗き、多くの住宅は柱の太さなどは地震で建物が受ける横揺れに対して、抵抗する要素にはなりません。

●平成12年6月以降には何が変わったのでしょうか?

 阪神淡路大震災では、昭和56年6月以降の壁の量の基準を満たしている住宅なのに倒壊している住宅がありました。このような住宅には二つの特徴がありました。一つは「壁の配置バランスが悪い」ことです。多くの住宅は、南側に大きな間取りのリビングを配置し、北側に水回り、階段など、北側に壁が集中する傾向があります。もう一つは、「接合部が弱かった」ことです。筋交いがたすき掛けで入っているなど、せっかく強い壁になっているのに、その接合部が釘止めだったりして、釘の強度で壁の強度が決まってしまっていたという事実が分かりました。そこで、平成12年6月以降の木造住宅は「壁の配の規定」が定められ、「すべての接合部について引き抜け強度を計算しそれに見合う接合をしなければいけない」ということになりました。

●耐震性を確認する方法「耐震診断」

 住宅の耐震性を確認する方法として、「耐震診断」が普及しています。木造住宅の場合、「壁の量」「壁の配置バランス」「接合部」「劣化状況」「屋根の重さ」等を建築士が現地調査を実施し、耐震性を判断します。耐震性の判断は、以下の4項目に分類されます。この耐震診断では、「中地震動 <震度5強>では損傷しないこと、」大地震動 <震度6強~7>では倒壊・崩壊しないこと」を判定します。

●旧耐震基準物件の98%は耐震性不足

 木造在来工法2階建て以下の建物を約2万棟調査した結果、旧耐震基準では98%、新耐震基準の物件でも85%の住宅の耐震性が不足していることが調査で明らかになっています。中古の木造住宅を購入する際には、必ず耐震診断を受診し、耐震性が不足している場合は、必ず耐震補強工事を実施しましょう。ちなみに、耐震診断の費用は平均10万円程度です。

●耐震性不足を軽視する傾向のある不動産業界

 昭和56年6月以前の旧耐震基準の物件の場合、不動産の取引の前に確認する「重要事項説明」において、耐震診断書の有無を記述し、取引関係者が認識できるようになっています。しかし、旧耐震基準の物件であるにもかかわらず耐震診断書無し、と表記されている物件が多く存在します。旧耐震基準なのに耐震診断すら実施していない物件ということになります。そのような物件の購入はお勧めしません。「東日本大震災の時も大丈夫だったから」というような説明をする不動産事業者もいたりしますが、何の根拠もありません。それより、「耐震性の確認ができてない物件、耐震性が不足している物件は、次の買い手が見つかりにくい=流動性が低い」ということです。一戸建て住宅であれば、自ら耐震改修を実施すればよいのでそんなに問題ではありませんが、共同住宅であるマンションは、その合意形成が困難で耐震改修を実施したマンションは全国的に見てもごくわずかです。旧耐震基準のマンションが多くみられるのが、不動産事業者による買取再販物件だったり、多額のリフォームを勧めるリノベーション事業者の紹介する物件だったりします。買取再販は仕入れの金額を抑えることができ、多額のリフォームを勧めるリノベーション事業者は、リフォームにお金を使ってほしいので、不動産の価格を抑えるために旧耐震基準のマンションの場合が多いようです。リスクをしっかり伝えることなく、流通させている事業者の倫理観が問われます。

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